台風12号の影響で通行止めになっていた、
熊野古道・中辺路の
小広峠〜船玉神社間(9.4km)に、地すべりの兆候が見られた箇所(岩神王子付近)を避けて迂回路が設置され、
いよいよ
3月10日より、
世界遺産登録ルートである
滝尻王子〜熊野本宮大社間がすべて通行可能になります!
また、上三栖⇔栗栖川の
長尾坂・潮見峠越え(世界遺産登録外ルート)の通行止めも同日に解除される予定で、これでやっと中辺路全線を歩けるようになります。
昨日は、開通前に語り部・ガイドを対象に実施された、
小広峠〜発心門王子間の実踏研修に参加してきました。早速、最新レポートをお届けします

近露からバスに乗り込み、小広峠バス停で下車

ついに、半年ぶりに開通になるルートとのご対面です

どんな風に変わっているのでしょうか?!期待と一抹の不安が入り混じります。
9時5分頃、小広峠バス停を出発。
熊瀬川王子から登り坂を上がり、一里塚跡を経てわらじ峠へ。峠を越えると、昔の石畳が残る下り坂に差し掛かるので、滑らないように気を付けながら下ります。
滝尻王子より500m毎に通し番号がつけられた道標で言えば
43番の地点を過ぎて、林道と交差する辺りから、新しく設置された迂回路に足を踏み入れました!
こんな看板や、
こんな道標が立っていますので、表示に注意しながら歩いてくださいね

林道を抜け、熊瀬川にかけられた橋を二つ越えると、ここからは30分ほどつづら折りの登りが続きます。
本来のルートより少しだけキツいかもしれませんが、ご覧ください〜この眺望

爽やかな風が吹き抜ける気持ちよい新ルートに、参加者の皆さんもご満悦の様子

丸太階段の段差があるところは、女性や背の低い方でもちょうどよい高さに設定されており、大変歩きやすいです。
10時30分。美しい杉林の中へ入りました。標高は650mほど。つづら折りの下り坂や緩やかなアップダウンが30分ほど続き、11時頃に林道交差地点を通過。
ここから約1.2kmの林道を行けば、蛇形地蔵尊のトイレ裏手から、本来の中辺路世界遺産ルートに合流します。
蛇形地蔵到着時刻は11時15分。ここで、一旦小休止です。
迂回路は全長
約4km、本来の世界遺産ルートより
約0.5km長くなっているようですが、歩きやすく整備されているせいか、あっと言う間に到着しました。
さて、蛇形地蔵を出発。
51番の道標や湯川王子を過ぎると、だんだんと登り坂になり、
52番の道標以降は、次の休憩地点・三越峠までずっと、急な登りが続きます。
普段古道を歩き慣れている語り部さんやガイドさんたちは、やはり健脚揃い。足取りも軽く、どんどん上がっていきます

前の日も取材対応で熊野古道を歩いた私は、さすがに疲れが・・・ふと足元を見ると、可愛い
バイカオウレンが点々と咲いていました。
可憐な花たちに励まされながら登っていると、今度は苔生した木肌に、かわいいキノコが

写真撮影でさらに遅れを取りながらも、無事12時に、三越峠の頂上
53番の道標に到着!ここで約30分のお昼休憩です。
久しぶりの、三越峠から望む紀伊山地の峰々。コンビニのおにぎりが、ご馳走のように美味しく感じられます

ランチを済ませ、12時35分に後半戦を開始。
ここからはほぼ下り。昔の集落後を抜けながら、すいすいと林道交差地点に差し掛かったとき・・・
わかってはいたけれど、やはり心痛む光景が目に飛び込んできました。時刻は、13時11分。
今回どんな風に修復されたのかとても心配だった、三越峠の土砂崩れ地点・・・
55番〜
56番の道標の、ちょうど中間辺りにあります。
ここは、山の表半分が上から下まですべて崩れてきたために、土砂を撤去しきれず、土砂や倒木の上に道を通しているのですが、今も台風による痛々しい爪痕が残されています。
初めて見る方はギョッとされるかと思いますが、専門家が安全性を確認した上で通行可能にしています。このような光景があるということを納得された上で歩いていただければと思います。
土砂で心なしか川底が上がった音無川沿いを進むと、台風前と変わらない、静かな佇まいの
船玉神社が迎えてくれました。ここは無事だったんだ。本当によかった

心を込めてお参りしました。
猪鼻王子を抜けて、最後の登り坂。発心門王子はもうすぐそこです

前を行く語り部さんの、「
さ〜んげさんげ、ろっこんしょうじょう〜」という掛け声が聞こえてきました。これは、山伏が大峯奥駈修行で行う掛け念仏。
苦しいときに「懺悔懺悔、六根清浄」と唱えることで、新たな力がふつふつと湧いてくると言われます。
語り部さんの掛け声の後に、「さ〜んげさんげ」と声を合わせながら、胸にこみ上げてくるものを感じていました。
台風12号より、早や半年。いったい何度、お客様や旅行会社から、いつになれば開通するのかとお問い合わせをいただき、私自身もどれほど、この日を待ち望んだことでしょうか。
たくさんの人々の祈りと、数えきれない方々の努力で、ついに全線開通した熊野古道・中辺路。
発心門王子の鳥居、熊野の聖域に続く結界を超える瞬間、つい、目頭が熱くなり・・・
今日一緒に歩いた語り部さんやガイドさんも皆、感無量だったと思います。思わず、バンザイ

清々しい気持ちで、発心門王子にゴールしました。
14時にウォーク終了。その後移動中に、森林組合の方々とばったりお会いしてお話を聞いていると・・・・この方々こそが、苦労して迂回路を拓いてくださった張本人だったのです

なんという偶然でしょうか!感激の余り、思わず記念撮影をお願いしました。
恥ずかしがりながらも快く撮影に応じてくださった、
森林組合勤務の松葉さんと早稲田さん。ありがとうございます

時には、4mもの丸太を担いで現場に向かわれたとのこと。想像を絶するほど大変な作業だったと思います。本当に、お疲れさまでした!思いがけぬ素敵な出逢いに感謝

皆さんも、次回歩かれる際はお二人のお顔を思い浮かべながら歩いてくださいね!
世界遺産登録されている本来の熊野古道ではなく、迂回路を歩くことについては、様々なご意見があるかと思います。
ですが、岩神王子の辺りの山は、亀裂が入り崩落の恐れがあるため、今も通行止めの状態が続いています。安全のため、熊野古道・中辺路を踏破される際は、必ず迂回路をご利用いただければと思います。
また、熊野古道は昔から、その時代によってルートが変遷してきたとも言われています。
中国の文豪・
魯迅先生は、自身の作品『
故郷』を、こんな言葉で結びました。
「其実地上本没有路,歩的人多了,也便成了路。」
(日本語訳:もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ)――と。
迂回路であったとしても、祈りの道が繋がり、結ばれていくことが大切なのであり、
ひとりひとりがそれぞれの想いを込めて歩くことで、それが道となっていくのではないでしょうか。
古の熊野詣でがそうであったように・・・
3月10日(土)。熊野古道・中辺路では、開通記念イベントとして
安全祈願祭りを実施し、この日に合わせて歩いてくださる方に豚汁のサービスと平安衣装でのお見送りをする予定です。
田辺・熊野は今、満開の梅の香りに満ちています。これから、ひと雨毎にもっともっと春めいてくるはず

ぜひ、蘇った
熊野古道・中辺路へお越しください。心より、お待ちしております
↓↓↓熊野古道迂回路開通祈願祭についてはこちら↓↓↓日時:3月10日(土)午前9:30〜10:00
場所:田辺市中辺路町野中地内(熊瀬川王子寄りの迂回路開始地点)
↓↓↓迂回路の詳細についてはこちら↓↓↓クリック!田辺市観光振興課インフォメーション いずれもお問い合わせは、
田辺市観光振興課までお願いします。
電話:0739-26-9929
(しゃぶ)